今回は、ワインに全く関係無い記事ですが、今年3月に発売した、朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」が面白かったので感想を書きました。
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死にがいを求めて生きているの (単行本) [ 朝井 リョウ ]
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平成を生きる2人の青年を中心に描いた小説で、元号が平成から令和に変わろうとしている今、まさに読み時の小説です。
私は昭和終わりに生まれた人間ですが、人生の大半を平成で過ごしたため、過去の自分と重ねつつ、じっくり考えながら読める本でした。
小説の概要
物語は病院から始まり、植物状態になった青年と、その回復を望んで毎日見舞いに来る、もう1人の青年が主人公です。
平成の初期に生まれた、同学年の2人が、何故そんな状態になったのかという謎を軸に、物語は展開していきます。
時間は小学校まで遡り、過去から現在に至るまでの2人の姿が描かれるのですが、面白いのは、何人かの他人の視点を通して、2人が描写されることです。
他人の視点を通して描かれることで、平成を生きた青年たちの、生き方や考え方が、主観・客観を交えて生々しく浮かび上がっています。
感想
主人公の2人はもちろん、その2人と同じ時間を過ごした、他の登場人物の言動や思いが、とてもリアルに描かれていました。
自分が学生の頃にも、こんな奴いたなー、とか、こんな事考えていたなー、というのが懐かしく思い出されます。
主人公に重ねて、自分の過去の記憶も思い起こされるため、過去や現在に自身が置かれた状況を客観的に振り返ることができる小説だと思います。
おまけ:螺旋プロジェクトについて
この本は「螺旋プロジェクト」と呼ばれる、8人の作家が共通のテーマを共有して書いた小説のうちの1編です。
各小説は、原子から未来に至るまでの、ある時代を舞台にかかれており、本作は「平成」が舞台ということになります。
各小説は1編毎に完結しており、単独でも十分に楽しめましたが、全て通して読むとまた違う面白さがでてきそうです。
4月には伊坂幸太郎の、シーソーモンスター(昭和後期)と、スピンモンスター(近未来)が発売されました。
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これから始まる令和の時代を考える上で、スピンモンスターもかなり気になります。
螺旋プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ ↓